イタリア語は当時ヨーロッパ世界の中心だったローマ帝国で話されていたラテン語の大衆の話し言葉「俗ラテン語」が発達してできたロマンス系言語のひとつで、最もラテン語の形をとどめている言語です。同じ俗ラテン語から派生したロマンス諸語にはフランス語、スペイン語、ポルトガル語、ルーマニア語があり、基本的な文法構造や語彙が非常によく似ています。
イタリア語が発生したのは10世紀頃といわれています。といっても、イタリア各地に様々な方言が存在していた状態だったのですが、13、14世紀、文化的優位が背景にあった中部イタリアのトスカーナ地方にて、ダンテ・アリギエーリ( Dante Alighieri 1265-1321)、ジョヴァンニ・ボッカッチョ(Giovanni Boccaccio 1313-1375)、フランチェスコ・ペトラルカ(Francesco Petrarca 1304-1374)といった初期ルネサンスの文学者がトスカーナ方言で著述を行なったため、標準語のイタリア語はトスカーナ方言を土台に徐々に作られていきました。ただ、イタリアは地方分権的な国であり、各地方に独特の個性ある文化・方言が存在し、地元の人によって大切にされています。
イタリア語に使用される文字は基本的には英語のアルファベットと同じです。ただし、J、K、X、W、Yの5文字は古語や固有名詞にしか使われないので、通常は21字のみでカバーできます。ほとんどのものがローマ字読みで簡単に読め、母音は日本語と同じくa[ア]、e[エ]、i[イ]、o[オ]、u[ウ]の5つしかありません。ローマ字読みとは異なるものにはChe[ケ]、chi[キ]、ce[チェ]、ci[チ]、ghe[ゲ]、ghi[ギ]、ge[ジェ]、gi[ジ]、gna[ニャ]、gne[ニェ]、gno[ニョ]などがあります。h はスペイン語やフランス語同様無音となり、hanno:<(彼らは)持っている(英語のhave動詞の変化形 >は[アンノ]と発音します。それ以外は書いてある通りに読めばいいのです。
困難なのが文法です。フランス語、スペイン語、ポルトガル語などその他のロマンス系言語を勉強されたことのある方は数・性による名詞、代名詞、形容詞の語尾変化、、動詞の法・時制・人称による多様な変化など、英語を更に上回る複雑さがよくお分かりだと思います。まず、全ての名詞には性別があります。例えば、gatto [猫]は男性名詞、casa [家]は女性名詞です。一般的には -o で終われば男性、-aで終われば女性となっておりますが、まれに逆の場合もありますので試験などでは要注意です。bambino(男の子供)とbambina(女の子供)のように同じ単語でも -o と-a両方使える単語もあります。複数形は英語やスペイン語のように -s や-es を付けるのではなく、男性の-o は-i に、女性の-aは-eになります。イタリア語の不定冠詞・冠詞は、英語のようにa, an, theだけで足りるのではなく、名詞の数・性によって変化するので複雑です。
例)
a book=un libro、a car=una maccina、a student=uno studente
the book=il libro、the car=la macchina、the student=lo studente
the books=i libli、the cars=le macchine、the students=gli studenti
形容詞は通常名詞の後に置かれ、修飾する名詞の性・数に従って語尾変化します。
語尾が韻を踏んだようになり、とても詩的で美しい響きになると思います。
(例)
un libro rosso (一冊の赤い本) → due libri rossi (2冊の赤い本)
una porta rossa (一つの赤い扉) → due porte rosse (二つの赤い扉)
さて、最もややこしく、学習に時間を要するのが動詞の活用です。人称・数によって、6通りに
変化するのです。その形で人称・数を表してしまうので、主語を省くことができます。
(例)
parlare(原形)= speak
(io) parlo = I speak
(tu) parli = you speak
(lui/lei) parla = he/she speaks
(noi) parliamo = we speak
(voi) parlate = you speak
(loro) parlano = they speak
これは現在形の例ですが、時制の種類が大変豊富なイタリア語には現在形の他にも近過去、半過去、遠過去、大過去、単純未来のそれぞれ6通りづつの活用形があります。ほぼ規則的に活用するので覚えればいいのですが、リズミカルで美しいイタリア語を習得するためです。頑張ってクリアすると、他のロマンス諸言語もかなり身近に感じてくるでしょう!