ポルトガル語の誕生
ポルトガル語はヨーロッパ言語の中でも正確な表現で知られています。
ポルトガル語の誕生は多くのヨーロッパ言語と同様にローマ帝国の滅亡によってもたらされたといえます。
それまでローマ帝国に支配されていた領土はラテン語を義務付けられ、その支配から開放された諸領土はラテン語にその地域の言葉を織り交ぜて新しい体系の言語を作り上げていきました。これらをネオ・ラテン語(ロマンス語)といい、ここから発展したのが現在のポルトガル語、スペイン語、フランス語、イタリア語などです。イベリア半島は紀元前3世紀から紀元5世紀ごろまでローマ帝国の支配におかれ、その後8世紀までゲルマン民族の侵略、更に8世紀から12世紀まではアラブ(ムーア)人の侵略を受け、これら異民族の追放を進めながら、1143年にポルトガルが建国されました(スペインは1470年に統治されました)。ポルトガル国家の確立とともに、それまでイベリア半島の西の方言だった"ガリーシア・ポルトゲス"が公用語として定められ、ここにポルトガル語が確立したのです。
「神はポルトガル人に海を与えた」と言いますが、建国後ポルトガルは休む間もなく大航海時代への先鞭をつけます。かくしてポルトガルは14世から16世紀にかけてアフリカ、アジアそしてアメリカ大陸へと活動域を広げいき、それとともにポルトガル語も世界中で話されるようになりました。今から400年前ごろのアジアの多くの港ではポルトガル語が商用言葉として使われていたのです。また、ポルトガル人が祖国に持ち帰った単語も多く、例えばcha=茶(中国語)とかjangada=いかだ(マレー語)などが知られています。 その後ポルトガルは世界の檜舞台から姿を消しますが、ポルトガル語は今でも世界の数ヶ所で話され続けています。ポルトガル語を公用語とする国は:ポルトガル、ブラジル、アフリカ:アンゴラ、モサンビークなどです。また、現地語と混ざって話されるポルトガル語系クレオール語は:マカオ(中国)、ゴア(インド)、東ティモールなどの一部住民に使われているそうです。
現代ポルトガル語:ポルトガルとブラジルの違い
ポルトガル語圏の二大文化といえば、ポルトガルとブラジルといえるでしょう。
ポルトガルによって発見・殖民された南米大陸のブラジルは1822年にポルトガルから独立しました。その後ポルトガルはフランス、イギリスの政治支配下におかれ、フランス語、英語文化への対応を余儀なくされました。一方、ブラジルでは遠いヨーロッパの政治情勢の影響を受けつつ新たなる国家の創設のためヨーロッパ移民・アフリカ奴隷・原住民ら異文化を融合させた独自の文化を生み出していきました。こうして異なった土壌で育まれたポルトガル語は、お互いを意識しながら今日に至っています。 両国で話されるポルトガル語の差は一部の単語・発音などに見られますが、大きな傾向として本家ポルトガルは文法的に原則主義で、その文体は必然的に古典的で美しく、一方、ブラジルでは多彩な異文化を反映して、文法ルールに縛られない躍動的な文体を作り上げていると言えます。
これと似たような関係に、イギリスとアメリカをあげられます。 しかし今はまさにグローバルな情報世界です。これまで"ブラジル語"に眉をひそめていたポルトガル人でしたが、氾濫するブラジルのTVドラマ、インターネットなどの影響から、ポルトガルでも"ブラジル語"が日常的になりつつあるようです。 とはいっても、ポルトガル語は依然として正確な言語であり、長くなりがちな文章はその反面、疑問の余地がないほどの表現力を持っています。ブラジルの法律書なども精緻に著されたポルトガル語の参考例といえます。いずれにしても、こうした両国の関係はこれからもポルトガル語の発展に寄与していくことは間違いないでしょう。